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大阪地方裁判所 昭和27年(ワ)3675号・昭26年(ワ)3566号 判決

原告 住田竜造

被告 金子寿吉 外一名

一、主  文

原告に対し、被告南村重治は、大阪市南区難波新地二番町十一番地宅地十四坪二勺の内、西南隅の部分(間口一、九八米奥行四、七米)の地上に存する木造片屋根トタン葺平家建店舗バラツク一戸の建物より退去し、被告金子寿吉は、右建物を収去して、夫々、右建物の敷地(間口一、九八米奥行四、七米)の部分を明渡し、且つ、被告等は各自昭和二十六年八月十六日以降右宅地明渡済に至る迄、一ケ月金五百円の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告等の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は「主文第一、二項同旨の判決」並に「仮執行の宣言」を求め、その請求の原因として、「(一)原告は昭和二十年十月頃訴外高松定吉より、同訴外人所有に係る大阪市南区難波新地二番町十一番地宅地十四坪二勺を賃借し、現在賃料一ケ月金一万円を支払い該地上に店舗並に住宅を建設しているところ、右宅地賃借当時、原告の知人である訴外瀬川菊次郎から、原告の右店舗と其の南側に隣接せる他人所有店舗との空地で、右賃借地の西南隅の一部である二坪五合一勺の部分(間口一間八厘、奥行二間三分三厘の部分)に、所謂かけだしと称するバラツクを建設し、一時的に一杯飲屋を経営したいから右部分の宅地を転貸したいとの申出があり、原告は、復員後職もなく困つていた同訴外人を救済する為、地主の承諾を得ずに該宅地二坪五合一勺を、一時使用の目的で、同訴外人に転貸した。同訴外人は該地上に木造杉板葺平家建店舗バラツク一戸、建坪二坪四合五勺を建設し、一杯飲み屋を開業していた。(二)然るに、同訴外人はその営業資金に窮し被告金子寿吉より融資を仰いだが其の返済が出来ず、右借金十万円の代償として、昭和二十一年十二月頃該バラツクを同被告に譲渡した。(三)その後被告金子寿吉から原告に対し、更めて該建物の敷地の転貸方の申出があり、原告は当初右申出を拒んだが、同被告が訴外真川義弘を介して懇請して来たので約一ケ年以上に亘り交渉の結果、原告は止むなく同被告に転貸を承諾し、昭和二十三年八月十六日公証人城栄太郎作成の確定日附ある契約書により、(イ)原告は被告金子寿吉に対し、同被告が訴外瀬川菊次郎から譲受けた前記仮設建物を使用する目的で、其の敷地二坪五合一勺を賃料一ケ月金五百円、月末持参支払の約定にて転貸すること、(ロ)転貸借期間は昭和二十三年八月十六日より向う満三ケ年間とする。右期間満了と同時に被告金子寿吉は該土地を返還すること、但し、情況に依り、原被告協議の上期間の更新を為すことあること、(ハ)現在本転貸借につき地主の承認を得ていないが原告は被告金子寿吉のために将来之が承認を得るよう協力すること、(ニ)被告金子寿吉は本件借地権を他人に譲渡し又は占有を為さしめないこと、被告金子寿吉に於て右地上物件の建物を他人に譲渡、賃貸しようとするときは必ず事前に原告の書面に依る承諾を得てからにすること。(ホ)本件土地につき将来区劃整理其の他公用徴収を受くる場合は何等異議なく即時明渡し被告金子寿吉は原告に対し何等の要求をも為さないこと、(ヘ)賃料支払を一回でも怠るか、其の他前記各条項の一にても違反し、其の他不信行為あるときは、原告は催告を要せず何時にても契約を解除することを得ること等の特約条項を附し、一時使用の目的を以つて特に期間を参ケ年間と限定して原告は被告金子寿吉に前記敷地部分につき転貸借契約を締結した。(四)然るに被告金子寿吉は右特約を無視して、昭和二十五年五月頃から原告に無断で被告南村重治に該バラツクを貸与して、占有を為さしめ、同被告は婦人靴の販売をしている。被告等は右は共同経営であると称しているが、昭和二十七年四月頃、其の営業名義をも被告金子寿吉から被告南村重治に切換え、ハリマオ靴店なる商号を以つて同被告自ら之が経営に当り、被告金子寿吉は全然営業に関与して居らない。しかも月額三万乃至五万円の支払を受けているから、これは賃料であることに疑いなく、従つて被告等の言うように共同経営ではないこと明かである。(五)右の事情があるので原告は被告金子寿吉に対し、昭和二十六年七月二十六日附内容証明郵便にて、前記(ハ)の特約条項違反を理由として、右転貸借契約を解除する。若し右解除が許されないものとすれば期限満了後は引続いて賃貸することはできない旨の意思表示をし、同書面は同月二十七日同被告に到達した。よつて同日限り賃貸借契約は解除された。そうでないとしても尚その後約定期限たる昭和二十六年八月十五日も経過したので、一時使用の目的で転貸した右土地の転貸契約期間は満了したものである。然るに、被告金子寿吉は昭和二十六年九月初頃原告を相手として大阪簡易裁判所に調停申立を為しつゝ、被告自ら期日に欠席すること多く、同年十二月十三日に調停不調に終つた。依つて被告金子寿吉は原告に対し、原告主張の敷地を、該地上のバラツクを収去して明渡す義務があるから、原告は同被告に対し、右バラツク収去土地明渡を求める次第であり、又被告南村重治は転借人たる被告金子寿吉から右のバラツク店舗を賃借し、之を占拠していることに因り、其の敷地を占拠して被告金子寿吉がその敷地の転貸人たる原告に対し、履行しなければならない、右バラツク店舗の収去及び其の敷地明渡義務を妨害せるものであるから、(本件敷地の所有者訴外高松定吉に対して原告の有する賃借権は対世的効力のあるものであつて)原告は、被告南村重治に対し、直接之が妨害排除を請求して、該バラツク店舗より退去し、其の敷地二坪五合一勺の明渡を求める。仮りに、右原告の主張が理由ないものとしても、本件宅地所有者である訴外高松定吉は其の所有権に基き本件繋争地の不法占拠者である被告金子寿吉に対しては勿論、被告南村重治に対しても、之が妨害排除請求権を有するものであるから、該宅地全部の賃借人である原告は、右地主訴外高松定吉の妨害排除請求権を代位行使して、被告南村重治に対し、該バラツク店舗より退去し、その敷地二坪五合一勺の明渡しを求める。(七)尚之と共に被告等両名各々に対し前記転貸借期間終了の翌日である昭和二十六年八月十六日以降右宅地明渡済に至る迄一ケ月金五百円の割合に依る転貸料相当の損害金の支払をも求める為め、本訴請求に及ぶ。」と述べ、被告等の抗弁に対し、

「(一)原告が被告金子寿吉から金五万円を受領し、預つていることは認めるが、その趣旨は被告等の言うように地主に対し、被告金子寿吉に原告から本件宅地を転貸することの承認を得る礼金名義を以つて授受されたものではない。右金員は、被告金子寿吉が一ケ年余りの交渉の結果、原告が同被告に本件土地を転貸する事に承諾したことに対する厚意に感謝して謝礼として提供したもので、原告は之を何回も返した末一応預つておくこととして、受領したものに過ぎない。(二)又、被告金子寿吉は、南村重治に本件バラツク店舗を賃貸しているものでなく共同経営していると抗弁するが現在営業名義も被告南村重治となつて居り、同被告が現実に該バラツクを使用し、自ら其の営業一切を担当しているのであるから、その営業形体が共同出資に因る共同経営であると否とに拘らず、同被告が該バラツク店舗を占拠せることに因り、本件繋争地を不法に占拠せるものであることには何等変りはない。(三)被告金子寿吉は本件建物の買取請求をすると主張するが、本件は原告主張の如く一時使用の目的で転貸したものであるから借地法第十条の適用の余地のないことは明らかで、同被告には買取請求権はない。」と述べた。<立証省略>

被告等訴訟代理人等は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負損とする」との判決を求め、答弁として、「原告主張事実中(一)の事実は知らない。同(二)の事実は否認する。同(三)の事実中、被告金子寿吉より原告主張の敷地の転貸方の申出をし、昭和二十三年八月十六日附契約書に基き転借したことは認めるが、その余の事実は知らない。同(四)の事実中被告金子寿吉が原告主張の土地上に在る原告主張の建物を所有し、その敷地を占有していることは認めるが、その余の事実は否認する。同(五)の事実中原告主張日時その主張の内容証明郵便の到着したこと、及び昭和二十六年九月頃原告を相手として、大阪簡易裁判所に対して、調停の申立をなし、それが不調に終つたことは認めるが、その他の事実はすべて否認する。而して被告金子寿吉は期間は一応三ケ年として置くが、期間満了後情況に応じ双方協議の上期間を更新すること、の定めで原告よりその主張の土地を転借したのであつて、これには訴外真川義弘が仲介し、前記の契約書を作成したのである。ところで右契約書には、原告は地主の承諾を得るよう協力する、とあるが、地主訴外高松定吉と原告とは、主従関係にあり、同訴外人は老齢のため、生駒に隠居し総てを原告に任せており、当時同訴外人は原告の右転貸を承認していたけれども、当時地代統制が未だきつかつたので、同訴外人が権利金を取ることは、表面上違反となるから脱法的に右の様な書き方をしてくれと言うので、そのように書いただけであつて、事実原告は地主の承認を得る礼金名義をもつて権利金五万円を受領したのである。従つて(一)原告は前記転貸借契約を一時使用の目的によるものであると主張するが、右契約書には一時使用なる文言は何処にもなく、却つて三ケ年なる期間を定め、契約の更新を認め、区画整理、公用徴収によりてのみ臨時の明渡義務を認むる等長期に亘る被告金子寿吉の建物所有を予想する文言があり、且前記のように原告に金五万円の権利金を贈与したこと、及び同地上の建物が僅か二坪余りに拘らず、建築費が当時十万円余を投じたることを併せて考えるときは、一時使用の目的の転貸借とみることはできない。従つて、借地法第十一条によつて三ケ年の期間は定めざりしものと看做され、同法第二条及び第三条による堅固の建物以外の建物を目的とするものとして、被告金子寿吉の転借権は契約時より三十年の存続期間を有するものである。(二)又被告金子寿吉は原告主張の建物に於て営業していたが、資金固渇の為め、被告南村重治等より出資を仰ぎ共同経営しているに過ぎないものであつて右建物の占有者は被告金子寿吉であり、被告南村重治は右建物を占有していないし、また被告金子寿吉に於て前記契約書に言う他人に建物を賃貸したることに該当せざることは勿論である。そもそも前記契約書の条項が、かゝる場合をも建物を他人に使用させたものとして、之を禁ずる趣旨とすれば、このような契約条項の如きは、借地法第十一条の借地人保護の規定の精神に反すると共に、土地賃借人の所有権を濫りに制限し、延いては、土地賃借人の営業乃至職業選択の自由をも妨害制限するに帰するものであつて、憲法第二十二条の保障を空になすものであり、法律上無効の条項である。仮りにさうでないとしても、この条項を盾にして契約を解除すのは権利の濫用である。それ故原告の被告金子寿吉に対する契約解除又は期間満了を原因とする本訴請求は理由がない。仮りに、原告主張のように転借期間が満了し被告金子寿吉に於て土地明渡義務があるとすれば、同地上の建物の買取を請求する。原告の被告南村重治に対する本訴請求は同被告は何等原告主張の土地も建物も占有していないのであるから、之亦失当である。」と述べた。<立証省略>

三、理  由

被告金子寿吉と原告とが、昭和二十三年八月十六日公証人城栄太郎作成の確定日附ある契約書により原告主張の土地につき一時使用の目的の点を除き原告主張の約定の転貸借契約を締結したことこれは、被告金子寿吉より転借の申出をし、訴外真川義弘が之を仲介斡旋して約一年間以上も交渉した結果、漸く契約締結の運びに到つたものであること、は当事者間に争はない。

そこで右転貸借契約が、原告の主張するような土地の一時使用を目的とするものであるかどうかを検討する。それには先づ右契約締結の経緯をみるのに証人瀬川菊次郎、同高松定吉、同住田キミヱ、同真川義弘(第一、二回)の各証言及び原告本人(第一回二回)被告金子寿吉本人各訊問の結果並に検証の結果を綜合すると、「原告は昭和二十年十月頃訴外高松定吉より同訴外人所有に係る大阪市南区難波新地二番町十一番地宅地十四坪二勺を賃借し、現在賃料一ケ月一万円を支払い、該地上に店舗並に住宅を建設しているが右宅地賃借当時、原告の知人である訴外瀬川菊次郎から、原告の店舗と其の南側に隣接せる他人所有店舗との空地で、右賃借地の西南隅の敷地(間口一、九八米奥行四、七米で前認定の本件転貸借契約の目的土地)の部分に所謂かけだしと称するバラツクを建設し、一時的に一杯飲屋を経営したいから右部分の宅地を転貸したいとの申出があり、原告は復員後職もなく困つていた同訴外人を救済する為、地主の承諾を得ずに該宅地部分を一時使用の目的で、同訴外人に転貸した。同訴外人は該地上に木造平家店舗バラツク一戸を建設し、一杯飲屋を開業していたところ、その営業資金に窮し、被告金子寿吉より融資を仰いだが、其の返済が出来ず、右借金十万円の代償として、止むなく昭和二十一年十二月頃該バラツクを同被告に譲渡した。そこで、之を譲受けた被告金子寿吉は右バラツクを自己の店舗に使用するため、その敷地を原告より借受けることが必要となつたのでその借受方を原告に申込むに到つた。かくて被告金子寿吉より右申込を受けた原告は、自己自ら使用の必要もあり、且転貸につき地主の承諾を得ることは不可能であるので、右申込を拒絶した。それがため被告金子寿吉は訴外真川義弘に仲介斡旋を依頼し、同訴外人が前認定のように斡旋し、一ケ年以上も交渉に日時を費し、その間訴外那須弁護士等も介入して止むなく原告も転貸を承諾して前認定の契約が結ばれるに到つたものであることが認められる。

次に証人住田キミヱ、同真川義弘(第一回)同金子シズヱ、同南村重治の各証言を綜合すると、「被告金子寿吉は、昭和二十一年十一月頃より昭和二十五年頃までの間に煙草紙巻機械の所謂説明売、ズツク販売、皮バンド販売、婦人靴販売とその商売を転々と変えていること」が認められ、証人瀬川菊次郎、同金子シズヱ、同南村重治の各証言及び被告金子寿吉本人訊問の結果並に検証の結果、証人金子シズヱの証言により真正に成立したと認められる乙第四号証を綜合すると、「被告金子寿吉は前認定の買受けの建物に逐次手を加え内部造作等をしてはいるものの、その買入費及び内部の造作費等を合計しても精々二十万円余りであり、之に反し、右店舗を利用して商売をして得る純利益は、年三十万円以上であること、並に右建物は敷地は約二坪(間口一、九八米奥行四、七米)で木造片屋根トタン葺平家建の仮設店舗であつて現在その内部は天上壁は同一材料ベニヤ板を張つて白ペンキが塗られているのみにて、僅に北側の壁に接して半永久的ともいうべき六尺程の(下一尺タイル)陳列棚があるに過ぎないこと」が認められ、又証人高松定吉の証言及び成立に争のない甲第三号証を綜合すれば「被告金子寿吉に対する転借契約につき地主たる訴外高松定吉は何等承諾を与えていないこと、」が認められ、そして成立に争のない甲第一号証によると、「被告金子寿吉に対する転貸借契約の条項中には、直接一時使用なる文字はないが、その期間は三ケ年間と特に明記されており、更新は双方当事者協議の上なしうる旨が規定されていること」が認められる。

凡そ土地の貸借関係について「一時使用を目的とする」の観念は必ずしも、時の長短だけによつて決すべきものではなく、契約が一時使用を目的とするものか否かは当事者の意思の表示せられたときの個人的社会的経済的事情によつて決すべきものであり、契約書に「一時使用」なる文言がないからと言つて必ずしも「一時使用」でないとは言えないこと勿論であつて、要はその土地の貸借の目的動機その他諸般の事情より見て、当事者が直に、その賃貸借の期間を短期限に限り期間経過後は賃貸借を継続する意思がなかつたかどうかを基準として判断すべきものと解するを相当とする。そして、かかる基準に立つて、本件を考えると、昭和二十年同二十一年頃の戦後の経済生活の極度に不安定の時に、前認定の如く原告が同情的に訴外瀬川菊次郎に原告主張の敷地部分を賃貸したる動機は、明らかに一時使用の為にしたものと言わねばならず、かかる一時使用の目的にて賃借した訴外瀬川菊次郎が建築した建物は明らかに借地借家法の適用外の建物であると認められる。しかも被告金子寿吉は初めから本件土地に店舗を設けて商売をしようとして、原告より本件土地を転借したのでなく、たまたま前認定のように訴外瀬川菊次郎に貸した貸金のかたに同訴外人より右建物の譲渡を受けた為に、転貸借契約が締結されたものであること、更に当時被告金子寿吉は前認定のように転々と商売を転業している事実等に徴するときは、同被告が本件土地を転借した動機は当時の経済状態の混乱期にあつてたまたま入手した右建物を以つてたとえ一年でも二年でも都会の繁華街に於て商売して、前記貸金の回収を計らんとした一時的土地並に店舗利用の意企であつたことが推察される。また前示認定の如く、右土地並に店舗利用の為に二十万円余りの資金を投下したとは言え、その反面一ケ年間に三十万円以上の純利益を得ているのであるから被告金子寿吉が二十万円余りの資金を投資して、原告主張の土地並に建物を借りたとて、この一事をもつて直ちに長期の賃借をする意図であつたと見ることはできず、むしろ当時の事情から一時使用の目的にて「たとえ一年、二年でもよい」との被告金子寿吉の意思を推測しうる。一方原告は前示認定の如く地主たる訴外高松定吉より右転貸借の承諾を得ておらなかつたのみならずその承諾を得ることは困難な事情にあつたこと、又右転貸借の敷地部分は僅か約二坪であり、該土地利用の目的で同地上に建築されていた建物は一時的仮設建物であつたことは前示認定の通りであつて、右転貸契約締結に当つては一年余りの期間、交渉がつづけられ漸く原告に於て止むなく転貸することになつたこと、等を徴すると、原告に於ては、転貸地上の建物はどうせ永くは保たない仮設建物であるから、短期間なら被告金子寿吉の懇請を入れて転貸してもよいと考えて転貸借契約をしたものと推認しうる。これらの事実を綜合すれば原告と被告金子寿吉との間の原告主張の敷地部分の転貸借契約は明らかに一時使用の目的をもつて契約書の如く、三ケ年の短期間を以つて賃貸されたものと認めるのが相当である。もつとも右契約には前示認定の如く「原告と被告金子寿吉とが期間満了後協議の上期間を更新することがありうる、」との約条があるが、かゝる契約更新条項は必ずしも一時使用の目的のための転貸借契約の性質に反するものではなく、これがあるからと言つて右契約を目して一時使用の目的の転貸借契約でないと解することはできない。更に又原告が被告等の主張するように前認定の転貸借契約締結に当つて被告金子寿吉より金五万円を受取つたことは原告に於ても認めるところではあるが、原告が受取つた右金五万円の趣旨は被告等の主張するように所謂権利金と認めうる証拠はなく、証人住田キミヱ、同真川義弘(第二回)の各証言及び成立に争のない乙第一号証を綜合すると、前認定の転貸借をするについての原告の好意に対して、原告に謝礼として、被告金子寿吉が提供したものであること」が認められる。然し右金五万円を原告が被告金子寿吉に転貸することの謝礼として受取つたからと言つて右土地の転貸借契約が「一時使用の目的でなされたこと」を否定するものではない。証人真川義弘(第一、二回)、同金子シズヱの各証並に被告金子寿吉本人訊問の結果中以上認定に反する部分は信用できない。

依つて原告より被告金子寿吉に対してなされた原告主張の敷地の転貸借契約は、「一時使用の目的を以つてなされたもの」であり従つて借地法第二条乃至第八条の適用のないものと言わねばならない。

次に被告金子寿吉が被告南村重治に対し右原告主張の敷地上の仮設建物を賃貸したものであるか否かの点につき争があるのでこの点を考えるに、証人住田キミヱ、同南村重治の各証言竝に原告本人(第一、二回)被告本人金子寿吉、同南村重治各訊問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、被告金子寿吉は原告より前認定の土地転借当初は同地上の前認定の仮設店舗で単独で営業をしていたが、昭和二十五年五月頃から被告南村重治より出資を求め、爾来同被告が現金を出資し、被告金子寿吉が右仮設店舗を提供して婦人靴店を経営するようになり、この頃から右店舗の経営は一切被告南村重治に任せ、被告金子寿吉は右店舗には顔を出さず、而かも毎月金三万円乃至五万円を被告南村重治より被告金子寿吉に支払つていること、更に昭和二十七年四月頃からは営業名義も被告南村重治名義にして、同被告が一切の経営に当つていることが認められるからその営業形体が共同出資に因る共同経営であると否とに拘らず、被告金子寿吉は冒頭認定の原告との転貸借契約条項に違反して昭和二十五年五月頃以降被告南村重治に転借土地上の仮設店舗を転貸し、同被告が之を占拠しているものと認めるのを相当とする。

而して、原告が昭和二十六年七月二十七日被告金子寿吉に到達の書面で契約違反を理由として転貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことは当事者間に争のないところであるから、右転貸借契約は同日限り解除されたものと言わねばならない。被告等はかゝる共同経営による他人の占有をも禁ずる契約条項は無効であると言うが、これを無効と解さねばならない法律上の根拠は現行法上いづこにも見出し得ないのみならず叙上認定の事実に鑑みるときは、原告は被告金子寿吉が自らその仮設店舗を使用して営業するからこそ止むなくその敷地の転貸をするに到つたことが推認されるところであり、被告金子寿吉に於ても、一年以上の交渉経過に於て原告の右意図を着手している筈であるから、右契約条項の趣旨が自分以外の者が占有使用することを禁ずる趣旨であることを了解して契約を結んだものと認められ、従つてかゝる契約条項に基いて原告がその転貸借契約を解除するのを目して権利濫用と言うことはできない。

さすれば被告金子寿吉は原告に対し右敷地を同地上の建物を収去して返還する義務があり、該地上の建物を貸借している被告南村重治は、これ又原告に対し収去さるべき建物を占有することによりその敷地を不法に占有しているものと言わねばならないから、右建物より退去してその建物の敷地の明渡をすべきである。

更に被告等は右建物についての買取請求権を行使する、と主張するけれども、すでに述べた如く前示転貸借契約は、借地法第四条の適用がないから、被告等にかかる権利を行使し得る理由はない。果して以上説明の通りとすると被告南村重治は、原告に対し、大阪市南区難波新地二番町十一番地宅地十四坪二勺の内、西南隅の部分(間口一、九八米、奥行四、七米)の地上に存する木造片屋根トタン葺平家店舗バラツク一戸の建物より退去し、被告金子寿吉は原告に対し、右建物を収去して、夫々右建物の敷地の部分を明渡し、且つ、被告等は各自右転貸終了後である昭和二十六年八月十六日以降右宅地明渡済に至る迄冒頭認定の一ケ月金五百円の割合による地代相当額の損害金を支払わねばならず、之を求める原告の本訴請求はまことに正当であり認容すべきである。よつて尚訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条を、「仮執行の宣言」につき同法第百九十六条第一項を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 喜多勝)

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